メニュー

起業ストーリー

今回の起業ストーリーは、総合マナー研修会社株式会社クレース・プランナーズを設立後、女性美容師の就労・独立開業のサポートに特化した株式会社UTAを立ち上げ、美容室「綿帽子」を経営する正門律子様にお話を伺いました。
(インタビュアー:野田葉子 弁護士・なでしコンサル東海理事)

CA、ホテルコンシェルジュを経験後、独立

野田:はじめに、正門さんが起業される前の職歴などをお聞かせいただけますか?

正門:地元の大学を卒業した後、全日本空輸に入社しました。客室乗務員として国内線、国際線に約2年乗務した後、退職。その後海外のホテルに短期でインターンシップに行きまして、今度はヒルトン名古屋に入社しました。コンシェルジュとして約2年間勤務して、28歳の時に独立しました。

プライベートでは4年前に出産。そして産後1年半経ったころ今度は美容室経営の株式会社UTAを新たに設立。現在、直営が2店舗、FCが1店舗あります。

野田:短期留学というのは、どちらに行かれていたのですか?

正門:ロサンゼルスです。全日空時代には、客質乗務員としてお客様に直接サービスを提供していたのですが、そのうち、サービスをするだけでなく、企画側に回りたい、ポジションを変わりたいと考えるようになりました。

新婚さんにはオリジナルカクテルを作る・・・とか、機内販売も売るだけでなく仕入れ商品から決めるとか、お客様一人一人のニーズに合わせてサービスを調整していければ、喜ばれるし売上も増えると思ったのですが、伝統のある大きな組織なので、当然ながら新人が職務権限を越えて自由にふるまうことを許されるはずもありません。

そこで、自分で自由にサービスを作るには、起業することが最適だ!と思いました。

運転免許や教員免許のように経営するならそれにふさわしい資格(MBA/経営学修士)を取得した方が良いと考え、退職後に下見がてらロスへ行きました。当時は、日本に経営の資格が取れる学校がなかったのです。約3か月後、帰国して親に「MBAを取るのに滞在費含めて2年で1,000万円くらいかかりそう」と言ったら、「自分で稼ぎなさい」と言われてしまいまい、その足でヒルトン名古屋に面接に行きました。自分で学費を稼いで出直そうと思ったのです。

野田:さすが正門さん、行動派ですね!

正門:「遅巧より拙速をモットーに」()。偶然、就職雑誌で見つけて入社したヒルトンですが、そこで転機がありました。26階がエグゼクティブフロアになっていて、そこで働かせて頂いていたのですが、経営者の方々のご利用が多く直接話を聞く機会に恵まれたのです。話の中で、資格を持って経営されている方はほとんどおらず、それどころか起業家には「中卒だよ」「高卒だよ」という方も多くいらっしゃり、学歴なんて関係ないことを実際に目の当りにしているうちに、資格がなくてもいいかもと思い始めました。

そんな折、1円でも会社ができるという新制度ができ、それを知るとすぐに働きながら法務局に行って会社を設立しました。引き継ぎなどを経て、その半年後に独立しました。

野田:独立後の明確なイメージはありましたか?

正門:最初はリスクを減らすためにできるだけ固定費をかけないように考えていました。全日空時代に培ったマナーと、大学の時の学部(英文科)を生かした語学と、この2本柱の研修サービスから始めました。最初から人を雇えるかわからなかったので、自分も講師として入れるようにしておきたかったのです。

「プレスリリース」の活用で、大反響

野田:最初は、会社をお1人で始められたんですね。

正門:はい、丸の内のオフィスビルの小さな1室を借りました。戴きものの応接セットを置いて、前職の同僚などに「アルバイトとして手伝ってほしい」と声をかけてスタートしました。

野田:起業してから苦労されたことはありますか?

正門:やはり、実績も認知度もない0のところからお客様を呼ぶ、という点が苦労しました。

野田:何か対策はされました?

正門:最初は、お客様は全然増えないのに、貯金は家賃や電気代などの支払いで順調に減っていって焦りました。サービスを知っていただきたい、かといって、チラシをうつお金もない。このままでは会社員の時にためた創業資金100万円が半年で尽きるという状態に。そんなときに、メディアを使ってPRしました。実際には、メディアだけではなくて、お金をできるだけかけずに20種類くらいの広報活動をしました。

野田:たとえばどんな広報活動をされたんですか?

正門:ブログやメルマガを書いたり、自分でホームページを作ったり、手書きでニュースレターのようなものを書いて、ポスティングしたり・・・色々やりましたね。思いつくものをかたっぱしからやって、知ってもらう努力をしました。

野田:メディアには、自分から売り込みをされたんですか?

正門:はい、メディア関係者3000名位に、一斉に送れる「プレスリリース」サービスというのがその頃始まったばかりで、それを教えていただき利用しました。最初に取材依頼が入ったのは、大阪のスポーツ新聞です。それから、関西圏の新聞雑誌テレビなどから取材が来るようになって、その後全国紙、最後にようやく地元のテレビなどに取り上げてもらえるようになりました。

野田:メディアに掲載された効果はありましたか?

正門:当時、個人向けのサービスをしていたのですが、目に見えてお客様が増えましたね。それまでは、お客様の体験談をホームページやニュースレターに掲載したり、メールマガジンやブログで「社長日記」を書いたりと地道な広報活動をしていたのですが、プレスリリース後は、桁違いに集客につながりました。

ただ、メディアの方から、「それまでのレッスンの様子をホームページで見ました」とか、「ブログの日記を読んで取材しようと思いました」などと言われ、今までやっていた他の広報活動は無駄にはなりませんでした。

野田:現在は、企業向けの研修が多いと思いますが、個人向けのサービスから移行されたのはいつころからですか?

正門:開業して4~5年目です。まずは個人向けサービスで知名度を上げて、並行して法人開拓をしていきました。企業は、実績がないと受け入れてもらえなかったり、年間予算が決まっていたりしてなかなかハードルが高いんです。

野田:法人への営業活動はどのようにされたんですか?

正門:法人で研修が決定するまでのキーパーソンやプロセスを研究。会社の課題解決となるような研修の提案とともに、講師の履歴書をコンペや会議に通したとき「この講師は経験豊富だから、きっと任せても大丈夫だ」と安心していただけるよう、講師陣の研修・講演実績を増やす努力をしました。たとえば、誰かの講演があると聞きつければ、その前座で1020分「役に立つテーブルマナー」や「経営者として役に立つマナー」などの話をさせてもらい、それをさも自分がメイン講師かのように「●年●月、●●ホテルにて100名の経営者向けて講演」などと履歴書に加えていくのです(笑)

また、中小企業では、トップの方が決定権を持っているので、名刺交換をさせてもらった経営者の方に直接お話を伺ってご提案をしたり、結果が出てくると新しくご紹介をいただいたり・・・というのが積み重なって、現在に至ります。
「会社の風土を前向きに変えたい」というような長期的なビジョンがある場合は顧問契約で毎月企業に講師を派遣しております。「社会人としての基礎マナーを教えてほしい」「電話対応を良くしたい」「部下との接し方を」という限定的な課題を解決する場合には新人研修・管理職研修などスポット的にうかがいます。

美容室の経営、という新たな挑戦

野田:2社目の株式会社UTAを立ち上げられて、いかがでしたか?

正門:この会社は、「綿帽子」という美容室の運営会社なのですが、もともと美容師さんが長時間労働や低賃金、雇用条件の悪さや、腰痛、手荒れなどの職業病から長く働き続けることが難しい、ましてや家庭を持ったら両立はできないという話を聞き、安心して長く働ける環境を作ってみたいと設立しました。営業時間は9:0018:00、日曜定休で、週14時間からでも勤務可能、子育て中はパートでも落ち着いたらまた正社員に戻れるという体制にしました。ただ、スタッフの集まりに比べてお客様のほうは想定より集まりが悪く、プレッシャーを感じましたね。

野田:それで、どうされたのですか?

正門:スタッフのほぼ全員を対象にまつげエクステの教育を実施、開業1年半後には緑区店店舗の半分をまつげエクステのお店にシフトチェンジしました。
現在、美容室はコンビニの約4倍の21万件もあり、サービスの差別化もしづらく、また過当競争になっていました。しかし、自まつ毛に接着剤でまつ毛を付けていく「まつ毛エクステ」サービスはまだ需要が供給を上回っている状態で、今後も成長が見込める分野でした。

また、働く方にとってもメリットがあります。髪のカット技術を身につけるまでには23年かかるのに対して、まつげエクステの技術は2か月ほどで習得できますので、何年も掃除や雑用などの下積み期間がなくても、すぐに活躍できます。また、腰痛や手荒れでシャンプーができなくなってもまつ毛エクステの技術があれば、美容の仕事に携われます。

img02_logo.jpg 綿帽子 緑区店

野田:まつ毛エクステを導入した結果は?

正門:おかげさまで、直営2店舗とも売上増。まつげエクステに力を入れた緑区店に至っては前年比200%増。ヘアサービスだけやっていたら、とてもこのような上昇ラインは描けなかったと思います。また、この5月にPOSシステムを導入したので、今後はより精度の高い業務分析をし、スタッフ教育を充実させ、お客様のニーズを見ながら新サービスを提供し、さらなる売上増を見込んでいます。

野田:美容室「綿帽子」の今後の展開は?

正門:FC展開を目標としています。美容師の皆さんに長く働きやすい場所を提供するとともに、より多くの方々と協力し、その環境を広めていきたいです。また、現在美容室を経営されている方の「現場を引退したいけど、あとつぎがいない」「お客様はいるのにスタッフがなかなか集まらない」といった課題が弊社のFC加盟により解決できればと思っています。

専門家は、賢く使う!

野田:正門さんは会社を2社お持ちで、専門家とのお付き合いもあるかと思いますが。

正門:1社目の設立は自分1人で行いましたが、2社目は最初から弁護士、税理士、社会保険労務士の先生方にアドバイスをいただきながら進めています。週1回のパート勤務から時短正社員、正社員など雇用条件が異なるスタッフが毎月入社する弊社のような環境では、特に社労士の先生には昇給や各種保険、給料計算などご尽力いただいています。
また、顧問の先生方だけでなく、スポット的に得意分野が違う先生方にもご意見を聞いたりお手伝いをして頂いたりしています。セカンドオピニオンのような感じですね。

野田:賢い専門家の使い方などはありますか?

正門:「○○がしたいのですが、可能でしょうか?」「○○を考えているのですが、リスクはありますか?」という聞き方だと、力になってもらいやすいと思います。「どうすればいいでしょう?」などと丸投げはNG。いわれた先生方も「…で、社長はどうしたいんですか?」と困惑するとおもいますので、自分がどのようにしたいのかという希望や仮説を立てて相談するのがポイントだと思います。

また、自分の周りに、すぐに相談できる専門家がどれだけいるか、また、いざという時に、すぐに頼めるように備えておくことが重要だと思います。

仕事と家庭の両立のコツ

野田:お仕事とご家庭は、どのように両立されているのですか?

正門:仕事も家庭も優先順位を決めています。どちらも予算と時間が限られた中で、結果を出すことが求められますが、会社は多くの人がかかわっているため、思い通りにいかないことも結果がすぐに出ないことも当然あります。そんな時は、気分転換を兼ねて家事に力を入れるようにしています。一人でできて、結果がすぐにでる()
仕事で何か耐えている期間は、家庭では玄関に美しいユリが飾られ、家中がピカピカに磨かれ、冷蔵庫には照り焼きチキンやひじきの煮物など作り置きのおかずが5品以上入って、夫と娘が喜んでいる・・・という状況になっています。

会社と家庭、両方うまくいくことが理想ではありますが、少なくても常にどちらかは良い状態であるようにコントロールしてます。

野田:お子様は、どこかへ預けられたりしているのですか?

正門:はい、保育園です。通常私が送り迎えをしていますが、仕事が遅くなる場合は夫と両方の母に迎えをお願いしています。

野田:理解と協力を得られているのですね!

これから起業される方へ!

野田:最後に、これから起業される方へのエールをお願いします。

正門:行動を起こすことが大事です。不確定な要素が多い世の中、完璧な計画を立てるのはそもそも無理がありますので、計画に時間をかけ過ぎず、見切り発車でもまずは始めることをお勧めします。そして、出来るだけPDCA(計画・実施・確認・再実施)サイクルを高速で回していく。実際に始めてからお客様の反応に合わせて修正をしたり拡大したりするようにしています。

また、失敗を怖がらず、すぐに結果が出なくてもくじけず、どんどん新しいことに挑戦してほしいですね。できれば方法は1つではなく複数考えて。「これがうまくいかなかったら終わり」ではなく、いくつもの方法を同時に試してうまくいったものを残したり力を注いだりするとリスクヘッジになります。

あとは、相談の相手を間違えないこと。勉強は学校の先生や塾の先生に聞くように、ビジネスの相談をするなら、うまくいっている経営者か専門家がいいと思います。

最終決断は自分でするにしても、専門家の力を借りた方が、結局は遠回りしないで済みます。

起業ストーリーバックナンバー

バックナンバー一覧